メルヘンな衝撃作「ココの詩」
こんにちは、ムギです!
新型コロナウイルスの影響で、わたしの学校もひと足先に春休みに入りました。
図書館もみんな閉館になってしまったので、しばらくはおとなしく家にある本を読んでいきます。
今回も前回に引き続き、高楼方子さんの本の感想です。
ココの詩 作 高楼方子
あらすじ
人形ココは、ある日不思議な金色の鍵を見つけ、自由に動く体を手に入れた。
生まれて初めて子供部屋を出たココ。街で出会った銀色のネズミに恋をするが、だまされて美術館に住むネコに売られてしまう。
召使いとして暮らすうち、ある絵画の贋作を作る一味を追うことになる…。
感想
イタリアの花の都フィレンツェを舞台に、ある絵画をめぐる人形ココと動物たちの戦い。
ストーリーをまとめるとこんな感じです。
いかにもメルヘンチックなあらすじに「もうすぐ高校生になるような私が読む本じゃないかな〜」なんて思い、後回しにしていました。
しかし。
ある意味ここ最近で一番の衝撃作でした。
※これから読む予定の方は、今すぐ先に本作を読んでから以下の記事を読むことをおすすめします!
はじめて外の世界に出たココは、クールな銀色ネズミのヤスと出会い、恋に落ちます。
そんな初恋相手が、実はとんでもない 「やくざなネズミ」でした。
あっさり騙され、借金のカタにネコの一味の召使いにされてしまいます。
既になかなかハードな展開です。
世間知らずで純粋なココは、ヤスを信じて金持ちネコのカーポのもとで召使いとして暮らし始めます。
そこでネズミのモロと出会い、さらにショックな出来事が。
美術館の絵画を贋作とすり替えて売りさばくネコの一味に、カーポとヤスも加担しているということを知ります。
そうと知ったからには、企みを阻止するべくモロに協力するココ。
しかし、なんだかんだで可愛がってくれているカーポ、なによりヤスへの想いが、ココを揺らします。
このココの気持ちの揺れと、登場人物たちの人間模様がリアルで引き込まれます。
悪役のはずのカーポですら、人間らしくて憎めないんですよね〜。
またリアルだからこそ、ヤスは読めば読むほどイヤな奴に思えてきます。読みながら何度こぶしを握りしめたことか。笑
それなのにココは何度も騙され、裏切られてしまいます。
読んでいるこちらはあちゃ〜と思わせられますが、本人にはどうすることもできなかったのでしょう。
子ども向けの恋物語としてはかなり苦く、残酷です。
正義と恋心の間で揺れ、痛い失敗を繰り返しながら、ココは少しずつ大人になっていきます。
そうして迎えた、贋作一味の計画が決行される日。
ここから予想外の急展開に。
第三部で語られるのは、すり替えられた絵画「サン・ロマーノの戦い」の物語です。
これがココの物語が重なり合い、絡み合っていきます。
そして、そうくるか!という衝撃のラスト。
読んでからもしばらく余韻から抜け出せませんでした。
しかし、このラストだからこそ、本作は単純な成長物語を超えた魅力を持っていると思います。
春の白昼夢のような雰囲気と相まって、読後は独特の切なさが残ります。
ぜひネタバレする前に読んでみてください。
まとめ
高楼方子さんの作品では、今のところお気に入りの一冊になりました。
デビュー作である本作は、前回紹介した「時計坂の家」よりも難解でハードな物語だと言えるかもしれません。
小さな女の子のココが恋の痛みや世の中を知っていく過程は、ぜひ中学生以上から大人に読んでほしいです。
もちろん子どもの頃に読んでも、忘れられない一冊になるのは間違いありません!
ボリュームはかなりたっぷりあるので、休校で時間がある人はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
それではまた次回!