春に読みたい!おすすめ本
こんにちは、ムギです。
最近は春らしい陽気が続いていて嬉しいですね〜。寒くも暑くもない時期って、貴重です。
今回はそんな春の日差しの下で読みたい本を、今まで読んだ中から6冊選んでみようと思います。
目次
1.西の魔女が死んだ
作・梨木香歩
学校へ行けなくなってしまった中学生の 「まい」は、イギリス人の魔女である祖母のもとで魔女修行に励みます。
魔女修行といっても、タイトルから想像するようなファンタジーではありません。
おばあちゃんの言う「魔女」になるための条件は、
「自分のことは自分で決めること」
「ほんとうでないことに惑わされないこと」
「自分の心の声に耳を傾けること」。
おばあちゃんの魔女としてのあり方は一本芯が通っていて、読みながら目の前がクリアになるような気がします。
普段は魔法の力を使わないおばあちゃんが、物語の最後に一度だけ使った「魔法」とは?
基本的に淡々とした物語ですが、このラストシーンは静かな感動がぐわっと押し寄せてきました。
新生活を前に、気持ちを一新させてくれる一冊です!
2.アヒルと鴨のコインロッカー
作・伊坂幸太郎
「一緒に本屋を襲わないか」。
アパートに引っ越してきた大学生の主人公が、隣人にそう誘われるところから物語が始まります。
なんとも不思議なあらすじのミステリー小説。
伊坂幸太郎さんらしいユーモアのあるセリフの言い回しを楽しみながら、さくさくっと読んでいると…。
はい、見事に騙されました。
事前にどんでん返しがあると分かっていても、思わず鳥肌が立ちます。
軽やかだけど、どこかやりきれない感情が残る読後感もまた良いんですよね。
春っぽいちょっと乾いた空気感が、この時期にぴったりではないでしょうか。
3.グリーン・レクイエム
作・新井素子
植物学者の主人公が恋をした女性は、緑の髪のの異星人だった。
植物をテーマにしたSFです。
ストーリーは短く読みやすいのに、なぜか強烈な印象を残す物語です。
ちょっと変わった文体で、好き嫌いは分かれると思います。だからこそ、この独特の世界観を作り出しているんですよね〜。
読んでいると、草花の鮮やかな緑色やそよ風、静かに流れるピアノの音色を五感で感じるような気がします。
春の日差しの中でまどろみながら読みたいです(*^ω^*)
本作についての記事を、以前アメーバブログの方で書いています。
詳しい感想はこちら→ グリーン・レクイエム
4.ずっとお城で暮らしてる
作・シャーリィ・ジャクスン
メアリ・キャサリン・ブラックウッドは十八歳。姉のコニーと共に、村から隔てられた美しいお屋敷で暮らしている。
正統派児童文学のようなあらすじとかわいらしい表紙が、思わず手に取りたくなります。
本作はそんなイメージで読むと、間違いなく衝撃を受けるでしょう。
実はれっきとした 恐怖小説なんですよ。
キャシーの空想が彩る屋敷での生活は、キラキラと美しく描かれていきます。
そんな中で徐々に姿を見せる村人たちの悪意、主人公の不穏な心理描写が見えてきて…。
血なまぐさい描写があったり、幽霊が出てきたりするわけではありません。それよりももっと怖いものがあるんだと思わせてくれる小説です。
謎だらけで、何か恐ろしいものを隠していそうな危うさもものすごく魅力的。いろいろ考察したくなります。
5.ゲイルズバーグの春を愛す
作・ジャック・フィニィ
アメリカの作家フィニィの、すこし不思議な短編集です。
どれもハズレがなく、中でも一押しは最後の一編「愛の手紙」。
古道具屋で買った机の三段ひきだしに手紙を入れておいたら、過去の人間から返事が帰ってきた !という、ちょっと変わったタイムファンタジーです。
ただし、奇跡が起きるのは3回だけ。
人が過去に行くのではなく、過去のとの繋がりはたった3通の手紙だけなんです。
すでに存在しない人との、ほんの一瞬の繋がり。この切なさは、「君の名は。」にも通じるところがあるのではないでしょうか。
その他の話も、どれも優しくてノスタルジックな雰囲気にあふれています。
遠い過去のアメリカへタイムスリップできる短編集です。
6.はるかな国の兄弟
作・リンドグレーン
病弱な少年クッキーが、死後の世界ナンギヤラで繰り広げる冒険譚。
リンドグレーンは「長くつ下のピッピ」の作者として有名ですが、本作は「ピッピ」の明るさとはかなりギャップのある物語になっています。
花の咲き乱れる「サクラ谷」の自然描写は本当に綺麗で、読んでいて空気がおいしく感じられるほど。
そんな綺麗な世界であるにもかかわらず、そこは死後の世界なんです。
児童文学らしからぬ物悲しさ、虚無感が漂う奇妙なお話。それでも、深く心に染み入ることは間違いありません。
ある意味大人向けのファンタジーです。
おわりに
夏休みに読みたい本や、読書の秋に読みたい本はよくあるけれど、春はあまりない気がして書いてみました。
出してみると意外にたくさんあるんですね〜。
テーマにあう本を探すのが楽しかったので、一年で春夏秋冬を全部作りたいと思います!
それではまた次回(*^^*)
ちょっと奇妙で贅沢「鳥 デュ・モーリア傑作選」
こんにちは、ムギです!
最近はファンタジーばかり読んでいるので、気分を変えてファンタジー以外の本を選んでみました。
今回は短編集「鳥 −デュ・モーリア傑作選−」の感想です。
感想
純愛もの、サスペンス、ホラー、探偵ものといろいろなテイストが楽しめます。
しかもそのどれもが文句なしに面白い、贅沢な短編集でした!
中でも特に好きだった二編と表題作について、短い感想を書きたいと思います。
鳥
ある日突然、野生の鳥たちが人間を襲い始めた!というお話。
最初は面白がっていた人々も、鳥たちの襲撃によって次々に命を落とします。
なぜ鳥が人を襲うのか、これから人類はどうなるのか、なんてことは全く説明されません。
ただ静かに、じわじわと日常が崩れていく過程がひたすら真に迫って描かれていきます。
これがめちゃくちゃ怖いんですよ!(◎_◎;)
もちろん、現実にはまずありえない設定です。それでも、もしこんな風に自然が牙をむいた時には、人間が出来ることは思っているよりずっと少ないのかもしれません。
表題作にふさわしい強烈な一編です。
モンテ・ヴェリタ
ヨーロッパのどこかに存在する未開の山、モンテ・ヴェリタ。
その頂には月を信仰する美しい人々が、永遠に年をとらずに古い僧院で暮らしている…。
荘厳で神秘的で、他の8編とはかなり雰囲気が違います。
この山に「呼ばれて」しまった親友の妻に伝言を届けに、山に足を踏み入れる主人公。そこで彼が目にしたものとは?
人智を超えた凄みのある作品です。
面白さではどれも優劣つけがたいですが、個人的に一番好きな話でした!
結局、モンテ・ヴェリタについての真相は明かされないまま。でもそれが良いんですねー。
読み終わって、もう一度冒頭に戻って読み返したくなりました。
林檎の木
何かにつけて鬱陶しい妻が病死し、自由な生活を謳歌する主人公。
しかしある日、亡き妻を思わせる庭の枯れかけた林檎の木が目につくようになり…。
これもまた怖〜い話です。
まず、執拗なまでの醜く恐ろしい林檎の木の描写に震え上がりました。
林檎の木がここまで不気味に書かれている話はなかなかないと思います。読んでるこちらまでリンゴが嫌いになりそうなほど。笑
そんな描写から、はじめは「亡き妻の亡霊が林檎の木となって帰ってくる」というホラーだと思って読んでいました。
しかし、途中からだんだんおかしいのは主人公の方のような気もしてきます。この辺がすごーく絶妙な書き方をしているんですよね。
主人公の目線から外して読むと、妄想に取り憑かれた男のこっけいな話にも思えてくるのが面白いです。
この他にも、映画館での短い恋を描いた、苦くも眩しい「恋人」。
気だるい夏のフランスの空気感が最高な 「写真家」。
何気なく読んで最後にあっと驚く 「番」。
突然未来にタイムスリップしてしまった夫人のおかしなSF 「裂けた時間」。
あまりに悲しいラストが余韻を残すミステリー短編 「動機」。
どれも本当に傑作で、つまらない話が一つもありません。
作者はイギリスの作家さんで、お屋敷の生活やお茶の時間、荒涼としたヒースの原といったイギリスっぽい生活感が満載なのも楽しいんですよ。
そして、そんな落ち着いた上品さに内包された不気味さ。これがすごく好みでした(*´◒`*)
面白い短編集をお探しの方、ぜひ手にとってお気に入りを見つけてください!おすすめです。
おわりに
ダフネ・デュ・モーリアは、レベッカの作者として有名なイギリスの女性作家です。
「レベッカ」の方がすごく面白かったので読んでみましたが、こっちも大当たりでした。
他にもデュ・モーリア短編集は何冊かあるようなので、見つけたらぜひ読んでみたいと思います。
それではまた次回!
本好きにこそ勧めたい「九年目の魔法」
こんにちは!ムギです。
中学も無事卒業して時間はたっぷりあるので、思い切り読書ライフを満喫しています。
今回はつい昨日読み終わった本の感想を。私の大好きなを3年ぶりに読み返してみました。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズの九年目の魔法です。
あらすじ
大学生のポーリィは、ある日自分の記憶の一部が二重になっていることに気づく。壁にかかった絵、読みかけの本の内容が、記憶と食い違っているのだ。
ことの起こりは九年前。隣家の葬式でひょろっとした眼鏡の男の人、リンさんに出会ったときのはず。
失われた記憶の謎を探るうち、恐ろしいことが起こっていた…。
感想
音楽と本をカギに展開する、極上の現代魔法譚です!
主人公は本好きの19歳の少女ポーリィ。
ある本をきっかけに、これまで送ってきた平凡な毎日とは別の、もう一つの記憶が蘇ってきます。
10歳の時に出会ったチェロ弾きの青年リンさんのこと。リンさんからもらったたくさんの本。二人で作った物語が、なぜか現実に現れる奇妙な事件。
失われていたのは、自分にとって一番大切な人に関する部分の記憶。
それなのになぜ忘れていたんだろう?
はじめて読んだのは小学生の頃だったので、当時はストーリーもざっくりとしか理解できてなかったと思います。
しかし、今回再読してみてびっくり。
たくさんの伏線や仕掛けを盛り込んだ、ものすごく緻密な物語なんです。
本作は「詩人トーマス」「タム・リン」というイギリスの妖精譚をベースに書かれています。
それらの物語と重なり合いながら、パズルのピースがはまっていくように物語の仕組みが見えていきます。
この過程は本当に見事で、ドキドキさせられました!
また、複雑な物語なのに飽きない理由の一つは、登場人物の魅力でしょう。
主人公ポーリィは、ヒーローになりたい空想好きな少女。それでいて、地に足がつかないような子ではありません。しっかり自分を持った頼もしいヒロインです。
対してリンさんは、ひょろっとした眼鏡の青年。音楽と本が好きで、子供のポーリィとも対等に話をし、ポーリィの書いた物語にも容赦なくダメ出しします。笑
10歳以上の年の差ながら、どちらも本好きで頑固なところは似た者同士。本作はこの二人のラブストーリーでもあるんですよ〜。
ポーリィの学校生活の描写も生き生きしていて、主人公の青春物語として読んでもすごく面白いです。
「あしながおじさん」のような恋と成長の物語でもありながら、奥にはしっかり魔法の世界観が潜んでいる…。
物語自体が主人公の記憶のように二重になった構造で、読めば読むほど様々な味わい方や発見が見つかる物語です!(*≧∀≦*)
おわりに
改めて読んで、作品の著書の中ではこの九年目の魔法が一番大好きな作品だと再確認しました。
ベースとなる話を知らないと腑に落ちないところがあったり、けっこう難解な物語でもあります。(正直2回目でもまだ分からないところもあります…)
だけど、その分また読み返したくなるような不思議な作品。
「本」が物語の重要なキーポイントとなっているので、本が大好き!という人にこそ勧めたい一冊です。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズはすごく好きな作家さんで、前にも感想記事を書きました。
興味がある方はこっちもぜひ読んでみてください↓
それではまた次回!
メルヘンな衝撃作「ココの詩」
こんにちは、ムギです!
新型コロナウイルスの影響で、わたしの学校もひと足先に春休みに入りました。
図書館もみんな閉館になってしまったので、しばらくはおとなしく家にある本を読んでいきます。
今回も前回に引き続き、高楼方子さんの本の感想です。
ココの詩 作 高楼方子
あらすじ
人形ココは、ある日不思議な金色の鍵を見つけ、自由に動く体を手に入れた。
生まれて初めて子供部屋を出たココ。街で出会った銀色のネズミに恋をするが、だまされて美術館に住むネコに売られてしまう。
召使いとして暮らすうち、ある絵画の贋作を作る一味を追うことになる…。
感想
イタリアの花の都フィレンツェを舞台に、ある絵画をめぐる人形ココと動物たちの戦い。
ストーリーをまとめるとこんな感じです。
いかにもメルヘンチックなあらすじに「もうすぐ高校生になるような私が読む本じゃないかな〜」なんて思い、後回しにしていました。
しかし。
ある意味ここ最近で一番の衝撃作でした。
※これから読む予定の方は、今すぐ先に本作を読んでから以下の記事を読むことをおすすめします!
はじめて外の世界に出たココは、クールな銀色ネズミのヤスと出会い、恋に落ちます。
そんな初恋相手が、実はとんでもない 「やくざなネズミ」でした。
あっさり騙され、借金のカタにネコの一味の召使いにされてしまいます。
既になかなかハードな展開です。
世間知らずで純粋なココは、ヤスを信じて金持ちネコのカーポのもとで召使いとして暮らし始めます。
そこでネズミのモロと出会い、さらにショックな出来事が。
美術館の絵画を贋作とすり替えて売りさばくネコの一味に、カーポとヤスも加担しているということを知ります。
そうと知ったからには、企みを阻止するべくモロに協力するココ。
しかし、なんだかんだで可愛がってくれているカーポ、なによりヤスへの想いが、ココを揺らします。
このココの気持ちの揺れと、登場人物たちの人間模様がリアルで引き込まれます。
悪役のはずのカーポですら、人間らしくて憎めないんですよね〜。
またリアルだからこそ、ヤスは読めば読むほどイヤな奴に思えてきます。読みながら何度こぶしを握りしめたことか。笑
それなのにココは何度も騙され、裏切られてしまいます。
読んでいるこちらはあちゃ〜と思わせられますが、本人にはどうすることもできなかったのでしょう。
子ども向けの恋物語としてはかなり苦く、残酷です。
正義と恋心の間で揺れ、痛い失敗を繰り返しながら、ココは少しずつ大人になっていきます。
そうして迎えた、贋作一味の計画が決行される日。
ここから予想外の急展開に。
第三部で語られるのは、すり替えられた絵画「サン・ロマーノの戦い」の物語です。
これがココの物語が重なり合い、絡み合っていきます。
そして、そうくるか!という衝撃のラスト。
読んでからもしばらく余韻から抜け出せませんでした。
しかし、このラストだからこそ、本作は単純な成長物語を超えた魅力を持っていると思います。
春の白昼夢のような雰囲気と相まって、読後は独特の切なさが残ります。
ぜひネタバレする前に読んでみてください。
まとめ
高楼方子さんの作品では、今のところお気に入りの一冊になりました。
デビュー作である本作は、前回紹介した「時計坂の家」よりも難解でハードな物語だと言えるかもしれません。
小さな女の子のココが恋の痛みや世の中を知っていく過程は、ぜひ中学生以上から大人に読んでほしいです。
もちろん子どもの頃に読んでも、忘れられない一冊になるのは間違いありません!
ボリュームはかなりたっぷりあるので、休校で時間がある人はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
それではまた次回!
不思議な世界への憧れ「時計坂の家」
こんにちは、ムギです!
またもや児童書ファンタジーの感想です。
今回は日本のものを…ということで、高楼方子さんの 「時計坂の家」について。
あらすじ
12歳の夏休み。フー子は憧れの従姉妹に誘われ、時計台のある海辺の街、汀館へ行くことになった。
奇妙な雰囲気の漂う祖父の家で過ごすうちに、階段の踊り場に不思議な位置にある扉を発見する。
その扉にかかった古い懐中時計がみるみるうちに花へと変わり、扉の向こうに美しい庭が現れた…。
感想
ミステリアスで奇妙な世界観に魅了される、密度の濃いファンタジーです。
一言で言うと、めちゃくちゃ好みの本でした!(≧▽≦)
夏休みのはじめての一人旅、同年代の子への憧れ、不思議な世界への扉といかにも王道なストーリーがまぶしいです。
舞台となる汀館や時計坂の家もとても魅力的です。
異国情緒漂う、どこか懐かしい街並み。
どことなくジブリの「耳をすませば」や「猫の恩返し」を思いだしました。
いかにも何かが起こりそうで、ワクワクが募ります(*゚▽゚*)
そこで出会うまぼろしのような庭もまた、美しいんです。わたしが見つけたとしても、間違いなく入っちゃうだろうなぁ〜。
しかし、徐々に不穏な気配が漂いはじめます。
この扉はもともと物干し台へ続くもので、フー子の祖母がここから落ちて死んだ、というのです。
危険を感じつつも、庭に魅了されていくフー子。どこからか聞こえてくる歌声に誘われ、庭の中心へと進んでいきます。
王道と見せかけて、じわじわと不安が忍び寄ってくる展開。
このまま帰って来れなくなるんじゃないかというような禍々しさ。
美しさと怖さが交互に顔を見せる不思議な世界観に、主人公とともに魅了されます。
懐中時計に掘られたイニシャルに、祖母の死と不思議な庭との関係。
いくつもの絡み合う謎を、フー子は町で出会った少年・英介と一緒に紐解いていきます。
不思議な庭の正体とは?
庭の中心には何が待っているのか?
謎が謎を呼ぶ展開にドキドキしっぱなし。
すべてが明らかになったとき、「庭」の存在の奥深さにぞくりとさせられました。
誰にでも、自分にはないものに強く憧れたり、不思議なものに惹かれる感情は多かれ少なかれ持っていると思います。
本作は特にそんな感情が強く、自分に自信のない主人公フー子の成長物語でもあります。
そんな感情とどう折り合いをつけていくかは、作中の登場人物だけでも本当にさまざまです。
飲み込まれてしまう人もいれば、ほとんど感じない人もいる。
感じながらもそれをよしとせず、抑制して生きている人もいる。
そんな中でフー子が選んだラストは、とても爽やかで力強いものに感じました。
もし自分だったらどうするかな、とふと考えてしまいます。
主人公は12歳ですが、わたし自身12歳の時に読んだら違うふうに受け取ったかもしません。
ワクワクするだけではない、とても繊細で奥深い物語です。
物語としても見事にまとまっていて、大人でも楽しめる児童書なのではないでしょうか。
不思議なもの、美しいものに惹かれてしまう人であれば、間違いなく忘れられない一冊になると思います!
まとめ
この本以来、高楼方子さんの作品が私の中でプチブームになっています。
「緑の模様画」「ココの詩」も読みましたが、こんな本が児童書コーナーに眠ってたのか!と衝撃を受けましたね。
本好きな女の子にも、繊細なファンタジーを味わいたい大人にもぜひオススメ。
前にも書いたように、ジブリの世界観が好きな人にはきっとハマるはずです。
次回とはいかないかもしれませんが、同作者の「ココの詩」についても必ず感想を書きたいと思っています!
それではまた次回!♪( ´θ`)
クレイジーでほろ苦い「私が幽霊だった時」
こんにちは、ムギです!
無事に高校受験にも合格したので、図書館通いにも拍車がかかっております。
最近は特にファンタジー熱がやまない状態。
本当は読んだはしから感想を書いていきたいのですが、読む方を優先するのでなかなか難しそうです…。
今回紹介するのは、英国ファンタジーの女王ダイアナ・ウィン・ジョーンズの、「私が幽霊だった時」です。
あらすじ
気がつくと、幽霊になっていた主人公。
生前はどうやら4人姉妹のひとりだったらしいのだが、家族の誰も自分に気づいてくれない。
それどころか、なぜ幽霊になってしまったのか、自分が誰なのかすらわからない!
幽霊になる前の記憶を探るため、奮闘するが…。
感想
普通の幽霊譚とはひと味もふた味も違う物語。
一筋縄ではいかないファンタジーです。
熱中しすぎて、手汗でブックカバーがびちょびちょになってました(^^;
あらすじにある通り、序盤はまったく何もわからない状態でスタートします。
途方にくれる主人公の前に現れる、自分の姉妹らしき人々。4人姉妹といえば「若草物語」のような優雅な女の子たちをイメージしますが、彼女たちはもっと個性的。
大柄で、寝起きは怪物と化す長女のカート。
ピアニスト志望の美少女ながら、自己中で感情の起伏が激しい三女イモジェン。
声が大きく、小さな魔女めいた四女フェネラ。
両親は忙しく、ほとんど育児放棄ぎみ。
それもあってか、不気味な人形を女神モニガンとして信仰してみたり、遊びで首をつりそうになったりととにかくパワフルで強烈です。
はじめて読むときは面食らうかもしれませんが、読んでいくとこの突き抜けたクレイジーさがだんだん快感になるので不思議です。
常軌を逸しているようで、ヒロインたちの置かれている状況や心情は実はリアルだったり。
最初は「ないない」と半ば呆れて読むのですが、よく考えたら自分にも当てはまるところがあるんですよね。笑
次女サリーはというと、両親を心配させる計画として、こっそり家出して死んだことにさせられているようです。
(なのに両親は気づかない…(ーー;))
ということは、普通に考えてこの場にいないサリーが主人公のはず。
しかし、主人公は友達の家に泊まっているサリーを目撃します。
じゃあ一体、この幽霊はだれなんだろう?
ここまでのところがちょっと複雑で混乱しそうになります。頑張って読んでいくと、中盤からは一気に予想外の展開に。
見事に伏線を回収する様は、ミステリー小説のような面白さがあります。
ネタバレしてしまってはいけないので詳しくは書けませんが、「ん?」と思うところも含めてしっかり読んでください!
ラストはほろ苦くも胸に残ります。序盤のハチャメチャさからは想像できない見事な結末でした。
まとめ
ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんは、私の大好きな作家のひとり。
破天荒なヒロイン、勢いよく進んでいくストーリー、そして見事な伏線回収。一度ハマるとくせになる作風です。
本作は作者の書く物語の魅力が詰まっていて、大満足でした!
全体に漂う霧が立ち込めたようなおどろおどろしい雰囲気もなかなかよかったです。ホラーやミステリーファンにもおすすめできる一冊だと思います。
作者は「大魔法使いクレストマンシー」シリーズや、「ハウルの動く城」シリーズなど、素晴らしい作品を他にもたくさん書かれています。
本作を読んで、これらもまた再読したくなってきました。
しばらくは存分にファンタジーを楽しみたいと思います!
それではまた次回♪( ´▽`)
不思議な力を持つ一族 「光の帝国」
こんにちは、ムギです。
最初の記事からずいぶん時間が経ってしまいました!
これからはしばらく時間がとれそうなので、ちょこちょこ投稿していきたいと思っています。
さっそく読書感想。今回の本は、恩田陸さんの光の帝国です。
光の帝国 あらすじ
膨大な書物を暗記する力、遠くの出来事を知る力、近い将来を見通す力。「常野」から来たという彼らは、不思議な力を持っていた。
日本のどこかでひっそりと生きる、常野一族をめぐる連作短編集。
感想
「常野」の人々にまつわる出来事が、淡々と語られていきます。
ぞわりと怖い話もあり、切なくなるような話もあり。連作短編集なので、各話の繋がりを探すのも楽しいです(´∀`=)
特に印象的だったのは表題作の「光の帝国」。
表題作の「光の帝国」は、時代が他より少し前。戦時下の日本で、登場人物たちの生活が徐々に奪われていく状況に、胸が締め付けられました。
そんな状況下でも、自分たちにできることをやり、ただ祈る。 穏やかな中に確かな強さを持つ常野の人々が、強く印象に残ります。
哀しい物語でありながら、読後はすっきりと澄んだ気持ちになれました。
文章もすっきりと読みやすいです。淡々とした感じが物語に合っています。
また、ちょっとした描写や風景が妙に懐かしく、既視感を感じます。
場面がはっきり目に浮かび、自分も同じ体験をしたことがあるような気がする…。これは本作に限らず、同作者の他の作品を読んでも感じます。
(同じように思う人は多いようで、恩田さんにはノスタルジアの魔術師なんていう異名があったりします。笑)
本作でも、リアルな日常と地続きのところに当たり前のように「常野」は存在しています。
しかも、それがいかにも自然。
当たり前すぎて気づかないだけで、不思議な出来事はすぐそこに潜んでいるのかもしれない。
そんな不思議な味わいに魅了されました。
中学一年の時に読んでいたので、再読になります。ほんの3年前ですが、やっぱり今読むと感じ方は全然違いますね〜。
ただ、はっきりとしたオチがないので、人によってはモヤモヤしたまま終わるかもしれません。
あくまで「すこし不思議な物語」感覚的に楽しむ本なのかな、と思います。
ファンタジーともSFともつかない不思議な読み心地が、私は好きでした!
同じく常野一族をめぐる物語で、蒲公英草紙という本があります。
こちらも読んだので、別の記事で感想をかけたらいいなーと思っています。
それではまた次回╰(*´︶`*)╯