不思議な世界への憧れ「時計坂の家」
こんにちは、ムギです!
またもや児童書ファンタジーの感想です。
今回は日本のものを…ということで、高楼方子さんの 「時計坂の家」について。
あらすじ
12歳の夏休み。フー子は憧れの従姉妹に誘われ、時計台のある海辺の街、汀館へ行くことになった。
奇妙な雰囲気の漂う祖父の家で過ごすうちに、階段の踊り場に不思議な位置にある扉を発見する。
その扉にかかった古い懐中時計がみるみるうちに花へと変わり、扉の向こうに美しい庭が現れた…。
感想
ミステリアスで奇妙な世界観に魅了される、密度の濃いファンタジーです。
一言で言うと、めちゃくちゃ好みの本でした!(≧▽≦)
夏休みのはじめての一人旅、同年代の子への憧れ、不思議な世界への扉といかにも王道なストーリーがまぶしいです。
舞台となる汀館や時計坂の家もとても魅力的です。
異国情緒漂う、どこか懐かしい街並み。
どことなくジブリの「耳をすませば」や「猫の恩返し」を思いだしました。
いかにも何かが起こりそうで、ワクワクが募ります(*゚▽゚*)
そこで出会うまぼろしのような庭もまた、美しいんです。わたしが見つけたとしても、間違いなく入っちゃうだろうなぁ〜。
しかし、徐々に不穏な気配が漂いはじめます。
この扉はもともと物干し台へ続くもので、フー子の祖母がここから落ちて死んだ、というのです。
危険を感じつつも、庭に魅了されていくフー子。どこからか聞こえてくる歌声に誘われ、庭の中心へと進んでいきます。
王道と見せかけて、じわじわと不安が忍び寄ってくる展開。
このまま帰って来れなくなるんじゃないかというような禍々しさ。
美しさと怖さが交互に顔を見せる不思議な世界観に、主人公とともに魅了されます。
懐中時計に掘られたイニシャルに、祖母の死と不思議な庭との関係。
いくつもの絡み合う謎を、フー子は町で出会った少年・英介と一緒に紐解いていきます。
不思議な庭の正体とは?
庭の中心には何が待っているのか?
謎が謎を呼ぶ展開にドキドキしっぱなし。
すべてが明らかになったとき、「庭」の存在の奥深さにぞくりとさせられました。
誰にでも、自分にはないものに強く憧れたり、不思議なものに惹かれる感情は多かれ少なかれ持っていると思います。
本作は特にそんな感情が強く、自分に自信のない主人公フー子の成長物語でもあります。
そんな感情とどう折り合いをつけていくかは、作中の登場人物だけでも本当にさまざまです。
飲み込まれてしまう人もいれば、ほとんど感じない人もいる。
感じながらもそれをよしとせず、抑制して生きている人もいる。
そんな中でフー子が選んだラストは、とても爽やかで力強いものに感じました。
もし自分だったらどうするかな、とふと考えてしまいます。
主人公は12歳ですが、わたし自身12歳の時に読んだら違うふうに受け取ったかもしません。
ワクワクするだけではない、とても繊細で奥深い物語です。
物語としても見事にまとまっていて、大人でも楽しめる児童書なのではないでしょうか。
不思議なもの、美しいものに惹かれてしまう人であれば、間違いなく忘れられない一冊になると思います!
まとめ
この本以来、高楼方子さんの作品が私の中でプチブームになっています。
「緑の模様画」「ココの詩」も読みましたが、こんな本が児童書コーナーに眠ってたのか!と衝撃を受けましたね。
本好きな女の子にも、繊細なファンタジーを味わいたい大人にもぜひオススメ。
前にも書いたように、ジブリの世界観が好きな人にはきっとハマるはずです。
次回とはいかないかもしれませんが、同作者の「ココの詩」についても必ず感想を書きたいと思っています!
それではまた次回!♪( ´θ`)